エイト
エイト
「……最近の新興勢力の出没で……薬はかなり使われていたそうです……それでも先程までは、私達、別働隊が持っていったあの薬の他にも在庫はあったのですが……残る全ての薬品が、何者かに強奪されたそうです……」
視界が闇に閉ざされ、バーンハルトの世界から音が消えた。
砂漠の闇はどこまでも深く、彼の心を蝕む。
(……俺は……どうするべきなんだ?!)
……彼女達を救う術は……ない……
ワクチンも治療薬も、作るのにはかなりの時間を要する。村人全ての薬の製造にはあまりにも時間が無さ過ぎる。しかし、だからと言って村人を救う為に時間をかけていては近隣の村人が危険な状況に陥る。黒死病は、ウイルス性の病気だ。放って置いたら近辺の村々、黒死病に感染していない者達までもが感染してしまう。そうなってしまったら、犠牲者はより多くなってしまう。フィルターを大量に生産して配るというのも考えてみたが、薬の製造より時間のかかるものを作るのは論外だ。死んでしまった部下達の装備は何者かに強奪されている為、余っているフィルターもない。
(……そんな事はわかりきっている!)
自分が為すべき事は、被害を最小限に抑える事だろう。
……そう、それが正しい判断だ……正しい選択だ……
「人を……無辜の民を殺す事が正しい判断だと言うのか?!」
……否……
断じて、否!
認めない。
人を救う為に、人を殺すなど、認めない!
それでは。