ワン
ワン
部下が待っている仮設の陣地まで歩いているバーンハルトは、星空を見上げてかぶりを振る。
(……俺も甘いな)
あんな施しをしたところで、彼等の生活状況が根本的に改善されるわけではない。それを承知で施しをしたのは……
(まったく……あんな子ども等に、接してしまったからだろうな)
夜の闇を見つめながらバーンハルトは砂を踏み締めた。
部隊に合流したバーンハルトが見たのは、傷つき、疲れ切った部下達の表情。皆、クリムゾン本部にワクチンを取りに向かわせた者達だ。だが、バーンハルトの驚愕の表情の原因は、眼下に置かれた数十の死体。いずれも対夜盗の為に村の付近で警戒させていた本隊の部下達だ。
「……どうした?」
バーンハルトの声が砂漠に静かに響き渡る。
「隊の半分を預かりながら……申し訳ございません」
痛恨の面持ちで語るアリーナ。
「クリムゾン本部までは何事もなく向かえました……村に近づくにつれて夜盗の群れが出没するようになり……警戒しながらここまで辿り着いたのですが……」
ギリ、と奥歯を噛み締めながらアリーナは呟く。
「本隊とすり替わった盗賊の群れに……不意打ちをされ……」
「……全ての物品を強奪されたか」
アリーナ以下、残存約二十名の部下達は肩を落としている。彼等は悔しさに体を震わせている。
「生き残ったのは何人だ?」
「……全部で十八名名です」
「本隊の生き残りは?」
「……一人もいません」
恐らく本隊はアリーナ達別働隊に扮した何者かに、同じように奇襲をかけられ、体制を整え直す間もなく壊滅してしまったのだろう。
(……本隊を離れた俺のミスか!)
悔しげにバーンハルトは舌打ちする。